高額療養費制度が変わりました。ニュースでは「上限が上がる」と伝えられた話です。ただ、親に付き添っている人にとって本当に効いてくるのは、上がった金額そのものより、数える単位がひとつ増えたことのほうかもしれません。
この記事は、自分の医療費ではなく親の医療費を、付き添う側から見ている人のために書いています。

変わったのは、3つだけ
厚生労働省は今回の見直しを、「主に療養期間が短期の方に追加のご負担をお願いする」一方で「長期療養者や低所得者へのセーフティネット機能を強化」するもの、と説明しています。上がった部分と、これから下がる可能性がある部分の両方がある、ということです。
金額の表(70歳以上)
親の分を見るなら、まずはこちらです。「外来だけの場合」の列は、入院していない通院だけの月に効いてくる、70歳以上だけの仕組みです。
| 所得の区分 | 1か月の上限(2026年8月から) | 外来だけの場合(1人ずつ) | 2026年7月まで | 多数回該当 | 年間上限(新しくできた) |
|---|---|---|---|---|---|
| 現役並みIII年収約1,160万円~ | 270,300円+(医療費-901,000円)×1% | -(入院と同じ上限) | 252,600円+1% | 140,100円 | 1,680,000円 |
| 現役並みII年収約770万円~約1,160万円 | 179,100円+(医療費-597,000円)×1% | -(入院と同じ上限) | 167,400円+1% | 93,000円 | 1,110,000円 |
| 現役並みI年収約370万円~約770万円 | 85,800円+(医療費-286,000円)×1% | -(入院と同じ上限) | 80,100円+1% | 44,400円 | 530,000円 |
| 一般~年収約370万円 | 61,500円 | 月22,000円1年で216,000円まで | 57,600円 | 44,400円 | 530,000円 |
| 住民税非課税 | 25,700円 | 月11,000円1年で96,000円まで | 24,600円 | 24,600円 | 290,000円 |
| 住民税非課税所得が一定以下 | 15,700円 | 月8,000円 | 15,000円 | - | 180,000円 |
※ 数字は厚生労働省の資料のとおりです。区分は年収の目安であり、実際には健康保険の標準報酬月額(給料を決まった幅に当てはめた月の額)や、国保・後期高齢者医療の課税所得で決まります。どの区分に入るかは加入先が判定します。
※ 住民税非課税でさらに所得が一定以下の区分では、1か月15,700円・外来8,000円・年間上限180,000円になります。
金額の表(70歳未満)
付き添っている自分自身や、まだ70歳前の親の分はこちらです。
| 所得の区分 | 1か月の上限(2026年8月から) | 2026年7月まで | 多数回該当 | 年間上限(新しくできた) |
|---|---|---|---|---|
| 区分ア年収約1,160万円~(標報83万円以上) | 270,300円+(医療費-901,000円)×1% | 252,600円+1% | 140,100円 | 1,680,000円 |
| 区分イ年収約770万円~約1,160万円(標報53~79万円) | 179,100円+(医療費-597,000円)×1% | 167,400円+1% | 93,000円 | 1,110,000円 |
| 区分ウ年収約370万円~約770万円(標報28~50万円) | 85,800円+(医療費-286,000円)×1% | 80,100円+1% | 44,400円 | 530,000円 |
| 区分エ~年収約370万円(標報26万円以下) | 61,500円 | 57,600円 | 44,400円 | 530,000円 |
| 区分オ住民税非課税 | 36,900円 | 35,400円 | 24,600円 | 290,000円 |
※ 多数回該当は、直近12か月のうち高額療養費に当てはまった月が3回以上あるとき、4か月目から適用されます。
※ 月をまたぐと別計算です(暦月ごと)。2026年7月までに受けた治療は、改定前の低い上限で計算されます。
自分や親がどの区分かは、加入している健康保険が判定します。会社の健康保険なら標準報酬月額、国民健康保険や後期高齢者医療なら所得で決まります。分からないときは、資格確認書か「資格情報のお知らせ」に書かれた保険者(入っている健康保険の運営元)に「自己負担限度額の区分を教えてください」と聞けます。
ここからが本題。「年」が2本、走りはじめました
ことばを絵で

新しくできた年間上限の「1年」は、8月から翌年7月までで数えます。1月から12月ではありません。4月から3月でもありません。
ところが、親の医療費でもうひとつ「年」を数えている人は多いはずです。医療費控除です。こちらは1月から12月で数えます。
同じ引き出しに入っている同じ領収書の束が、いま2つの違う「年」で数えられています。
8月から翌年7月で数える年 … 高額療養費の年間上限(保険の話)
1月から12月で数える年 … 医療費控除(税金の話)
どちらも「1年分の医療費をまとめる」作業なのに、締め日が半年ずれている。制度が悪いというより、もともと別々に育った仕組みが、今年から同じ机の上に並んだ、ということです。
付き添う側にとっての実務的な意味は、はっきりしています。領収書を「年」でまとめてしまうと、片方に使えなくなるのです。日付順の1本の並びにしておけば、8月〜7月でも1月〜12月でも、どちらにも切り出せます。逆に年ごとの封筒に分けてしまうと、あとから切り直す作業が発生します。
もし親の領収書を封筒や箱にまとめているなら、年で分けず、日付順に1本にしておく。それだけで、この半年のずれは問題ではなくなります。
お金は「親の家」に届きます
年間上限は、窓口でその場で安くなるものではありません。1年間の自己負担が積み上がって上限に達したあと、加入している保険者から払い戻しを受ける形です。厚生労働省の資料にも「保険者から還付を受けることができます」と書かれています。
ここに、付き添う側だけがぶつかる構造があります。
- 医療費を実際に払っているのは、付き添っている自分かもしれません。
- けれど保険に入っているのは親で、通知が届くのは親の住所です。
- 届く封筒は、役所や広域連合からのほかの郵便と、見分けがつきません。
「知らないまま損をする」と言われる状況の中身は、たいてい知識の不足ではありません。情報が届く場所と、動ける人が、別の家にいるということです。親がその封筒を開けなかったのは、うっかりではなく、開けても自分に関係のある紙だと分からなかったからです。
だから対策も、制度を勉強することではありません。親の家に、どこから何が届くのかを知っておくことです。そしてそれを知るのに必要なのは、たった1つの情報です。
自分の場合はどうか、を確かめる
ここまで金額の表を出してきましたが、平均や統計に意味はありません。効いてくるのは、あなたの親がどの区分に入るか、という1点だけです。区分がひとつ違えば、1か月の上限は61,500円にも85,800円にもなります。
知りたいのは、次の3つです。
- 加入先はどこか(後期高齢者医療広域連合/市区町村の国民健康保険/健康保険組合/協会けんぽ など)
- どの所得区分か(これは加入先が判定します。自分で計算しなくて構いません)
- ひと月にいくら払っているか(領収書の自己負担額。だいたいで構いません)
この3つを入れて、上の表のどこに当たるかをその場で出せるようにしてあります。使っている数字は、上の表とまったく同じものです。
親のくすり・医療・お金 診断センターで確かめる ›※ 入力した内容はどこにも送信されません。
今日できる、ひとつのこと
親の資格確認書か「資格情報のお知らせ」を見て、「保険者の名前」をスマホにメモする。
資格確認書か「資格情報のお知らせ」(マイナ保険証の人に届く紙。マイナポータルでも見られます)に、「◯◯後期高齢者医療広域連合」「◯◯市」「◯◯健康保険組合」のいずれかが書かれています。その名前をひとつ、メモアプリに書くだけです。1分もかかりません。
これが、あとで効きます。年間上限の払い戻しも、限度額適用認定証も、区分の確認も、問い合わせ先はすべてこの保険者です。名前が分かっていれば、必要になった日に「どこに聞けばいいのか調べる」ところから始めなくて済みます。今日は、それだけで十分です。
急がなくていいことも、書いておきます
年間上限の最初の1年は2026年8月から2027年7月までです。払い戻しの話が現実になるのは、この期間が終わったあとです。今日から慌てて手続きをする種類の制度ではありません。
また、多数回該当の金額は据え置かれています。すでに長く治療を続けていて毎月上限まで払っている方の負担が、今回の見直しで増えるわけではありません。
変わったことを知っておくのは、備えるためであって、心配するためではありません。上の「今日できる、ひとつのこと」だけ済ませておけば、あとは必要になった日に調べれば間に合います。
高額療養費制度を利用される皆さまへ(厚生労働省)(2026-07-31更新)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/001726232.pdf
このページの金額は2026-09-09に一次資料で確認しました。制度は改定されます。実際の手続きの前に、必ず加入先の保険者でご確認ください。なお、令和9年8月からは所得区分がさらに細かく分かれる予定です。このページに載せているのは令和8年8月から令和9年7月までの額です。
このページのことば
- 高額療養費
- 何のため:1か月の窓口の支払いが上限を超えたとき、超えた分が戻るしくみです。2026年(令和8年)8月からは1年(8月〜翌7月)の上限もあります。
誰に聞く:入っている健康保険(保険者)へ。 - 多数回該当(たすうかいがいとう)
- 何のため:直近12か月で上限に届いた月が3回以上あると、4回目からの上限が下がるしくみです。
誰に聞く:入っている健康保険(保険者)へ。 - 保険者(ほけんしゃ)
- 何のため:入っている健康保険の運営元です。資格確認書や「資格情報のお知らせ」に名前があります。
誰に聞く:書かれている名前の窓口へ。
医療費と保険の、ほかの答え
窓口の支払い・上限・控除・保険の切り替えについて、窓口でそのまま聞ける一言をまとめたページです。
- 通院だけでも窓口の支払いは上限までにできる?
- 入院の窓口で立て替えが要るか聞いてよい
- 入院が月をまたぐと医療費の上限は2回分?1日〜末日で数える仕組み
- 入院の請求が上限のはずなのに高いとき
- 難病の認定が出たあと、窓口で払う額はどう変わる?
- 心の病気の通院や障害の治療で、医療費が1割になる制度
- 75歳で保険の名前が変わる。窓口の負担は1割・2割・3割のどれ?
- 病気の子の学校のこと、誰に相談する?
- 治療費の心配は病院の誰に相談できる?相談室と、がん相談支援センター
- 治療しながら働きたいと勤め先にどう伝える?主治医の意見書と相談先
- 会社を辞めたあとの健康保険はどうする?期限と保険料の上限
- 転職したばかりで新しい保険証がまだ。病院でどうする?
- 年末に受けた治療の支払いが年明けだと、どちらの年に入るか
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