2026年8月の診療分から/出典:厚生労働省(2026-09-09に確認)

高額療養費制度が変わりました。ニュースでは「上限が上がる」と伝えられた話です。ただ、親に付き添っている人にとって本当に効いてくるのは、上がった金額そのものより、数える単位がひとつ増えたことのほうかもしれません。

この記事は、自分の医療費ではなく親の医療費を、付き添う側から見ている人のために書いています。

高額療養費の上限は2026年7月まで月ごとだけ。8月から翌7月までの1年の上限もでき、月ごとと1年ごとの2つになった
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変わったのは、3つだけ

1か月の上限が上がったたとえば70歳以上の「一般」区分なら、月57,600円から月61,500円へ。
年間上限ができたこれまで上限は月ごとにしかありませんでした。8月から年単位の上限が新しく設けられます。
多数回該当は変わらない12か月で4回目以降が安くなる仕組みは、金額が据え置かれました。長く治療している人の負担を増やさないためです。

厚生労働省は今回の見直しを、「主に療養期間が短期の方に追加のご負担をお願いする」一方で「長期療養者や低所得者へのセーフティネット機能を強化」するもの、と説明しています。上がった部分と、これから下がる可能性がある部分の両方がある、ということです。

金額の表(70歳以上)

親の分を見るなら、まずはこちらです。「外来だけの場合」の列は、入院していない通院だけの月に効いてくる、70歳以上だけの仕組みです。

所得の区分1か月の上限(2026年8月から)外来だけの場合(1人ずつ)2026年7月まで多数回該当年間上限(新しくできた)
現役並みIII年収約1,160万円~270,300円+(医療費-901,000円)×1%-(入院と同じ上限)252,600円+1%140,100円1,680,000円
現役並みII年収約770万円~約1,160万円179,100円+(医療費-597,000円)×1%-(入院と同じ上限)167,400円+1%93,000円1,110,000円
現役並みI年収約370万円~約770万円85,800円+(医療費-286,000円)×1%-(入院と同じ上限)80,100円+1%44,400円530,000円
一般~年収約370万円61,500円月22,000円1年で216,000円まで57,600円44,400円530,000円
住民税非課税25,700円月11,000円1年で96,000円まで24,600円24,600円290,000円
住民税非課税所得が一定以下15,700円月8,000円15,000円-180,000円

※ 数字は厚生労働省の資料のとおりです。区分は年収の目安であり、実際には健康保険の標準報酬月額(給料を決まった幅に当てはめた月の額)や、国保・後期高齢者医療の課税所得で決まります。どの区分に入るかは加入先が判定します。
※ 住民税非課税でさらに所得が一定以下の区分では、1か月15,700円・外来8,000円・年間上限180,000円になります。

金額の表(70歳未満)

付き添っている自分自身や、まだ70歳前の親の分はこちらです。

所得の区分1か月の上限(2026年8月から)2026年7月まで多数回該当年間上限(新しくできた)
区分ア年収約1,160万円~(標報83万円以上)270,300円+(医療費-901,000円)×1%252,600円+1%140,100円1,680,000円
区分イ年収約770万円~約1,160万円(標報53~79万円)179,100円+(医療費-597,000円)×1%167,400円+1%93,000円1,110,000円
区分ウ年収約370万円~約770万円(標報28~50万円)85,800円+(医療費-286,000円)×1%80,100円+1%44,400円530,000円
区分エ~年収約370万円(標報26万円以下)61,500円57,600円44,400円530,000円
区分オ住民税非課税36,900円35,400円24,600円290,000円

※ 多数回該当は、直近12か月のうち高額療養費に当てはまった月が3回以上あるとき、4か月目から適用されます。
※ 月をまたぐと別計算です(暦月ごと)。2026年7月までに受けた治療は、改定前の低い上限で計算されます。

自分や親がどの区分かは、加入している健康保険が判定します。会社の健康保険なら標準報酬月額、国民健康保険や後期高齢者医療なら所得で決まります。分からないときは、資格確認書か「資格情報のお知らせ」に書かれた保険者(入っている健康保険の運営元)に「自己負担限度額の区分を教えてください」と聞けます。

ここからが本題。「年」が2本、走りはじめました

ことばを絵で

領収書は年ごとの封筒に分けず日付順の1本の束に。8月から翌7月と1月から12月のどちらの年にも使える

新しくできた年間上限の「1年」は、8月から翌年7月までで数えます。1月から12月ではありません。4月から3月でもありません。

ところが、親の医療費でもうひとつ「年」を数えている人は多いはずです。医療費控除です。こちらは1月から12月で数えます。

同じ引き出しに入っている同じ領収書の束が、いま2つの違う「年」で数えられています。

8月から翌年7月で数える年 … 高額療養費の年間上限(保険の話)
1月から12月で数える年 … 医療費控除(税金の話)

どちらも「1年分の医療費をまとめる」作業なのに、締め日が半年ずれている。制度が悪いというより、もともと別々に育った仕組みが、今年から同じ机の上に並んだ、ということです。

付き添う側にとっての実務的な意味は、はっきりしています。領収書を「年」でまとめてしまうと、片方に使えなくなるのです。日付順の1本の並びにしておけば、8月〜7月でも1月〜12月でも、どちらにも切り出せます。逆に年ごとの封筒に分けてしまうと、あとから切り直す作業が発生します。

もし親の領収書を封筒や箱にまとめているなら、年で分けず、日付順に1本にしておく。それだけで、この半年のずれは問題ではなくなります。

お金は「親の家」に届きます

年間上限は、窓口でその場で安くなるものではありません。1年間の自己負担が積み上がって上限に達したあと、加入している保険者から払い戻しを受ける形です。厚生労働省の資料にも「保険者から還付を受けることができます」と書かれています。

ここに、付き添う側だけがぶつかる構造があります。

  • 医療費を実際に払っているのは、付き添っている自分かもしれません。
  • けれど保険に入っているのは親で、通知が届くのは親の住所です。
  • 届く封筒は、役所や広域連合からのほかの郵便と、見分けがつきません。

「知らないまま損をする」と言われる状況の中身は、たいてい知識の不足ではありません。情報が届く場所と、動ける人が、別の家にいるということです。親がその封筒を開けなかったのは、うっかりではなく、開けても自分に関係のある紙だと分からなかったからです。

だから対策も、制度を勉強することではありません。親の家に、どこから何が届くのかを知っておくことです。そしてそれを知るのに必要なのは、たった1つの情報です。

自分の場合はどうか、を確かめる

ここまで金額の表を出してきましたが、平均や統計に意味はありません。効いてくるのは、あなたの親がどの区分に入るか、という1点だけです。区分がひとつ違えば、1か月の上限は61,500円にも85,800円にもなります。

知りたいのは、次の3つです。

  • 加入先はどこか(後期高齢者医療広域連合/市区町村の国民健康保険/健康保険組合/協会けんぽ など)
  • どの所得区分か(これは加入先が判定します。自分で計算しなくて構いません)
  • ひと月にいくら払っているか(領収書の自己負担額。だいたいで構いません)

この3つを入れて、上の表のどこに当たるかをその場で出せるようにしてあります。使っている数字は、上の表とまったく同じものです。

親のくすり・医療・お金 診断センターで確かめる ›

※ 入力した内容はどこにも送信されません。

今日できる、ひとつのこと

親の資格確認書か「資格情報のお知らせ」を見て、「保険者の名前」をスマホにメモする。

資格確認書か「資格情報のお知らせ」(マイナ保険証の人に届く紙。マイナポータルでも見られます)に、「◯◯後期高齢者医療広域連合」「◯◯市」「◯◯健康保険組合」のいずれかが書かれています。その名前をひとつ、メモアプリに書くだけです。1分もかかりません。

これが、あとで効きます。年間上限の払い戻しも、限度額適用認定証も、区分の確認も、問い合わせ先はすべてこの保険者です。名前が分かっていれば、必要になった日に「どこに聞けばいいのか調べる」ところから始めなくて済みます。今日は、それだけで十分です。

急がなくていいことも、書いておきます

年間上限の最初の1年は2026年8月から2027年7月までです。払い戻しの話が現実になるのは、この期間が終わったあとです。今日から慌てて手続きをする種類の制度ではありません。

また、多数回該当の金額は据え置かれています。すでに長く治療を続けていて毎月上限まで払っている方の負担が、今回の見直しで増えるわけではありません。

変わったことを知っておくのは、備えるためであって、心配するためではありません。上の「今日できる、ひとつのこと」だけ済ませておけば、あとは必要になった日に調べれば間に合います。

出典
高額療養費制度を利用される皆さまへ(厚生労働省)(2026-07-31更新)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/001726232.pdf
このページの金額は2026-09-09に一次資料で確認しました。制度は改定されます。実際の手続きの前に、必ず加入先の保険者でご確認ください。なお、令和9年8月からは所得区分がさらに細かく分かれる予定です。このページに載せているのは令和8年8月から令和9年7月までの額です。

このページのことば

高額療養費
何のため:1か月の窓口の支払いが上限を超えたとき、超えた分が戻るしくみです。2026年(令和8年)8月からは1年(8月〜翌7月)の上限もあります。
誰に聞く:入っている健康保険(保険者)へ。
多数回該当(たすうかいがいとう)
何のため:直近12か月で上限に届いた月が3回以上あると、4回目からの上限が下がるしくみです。
誰に聞く:入っている健康保険(保険者)へ。
保険者(ほけんしゃ)
何のため:入っている健康保険の運営元です。資格確認書や「資格情報のお知らせ」に名前があります。
誰に聞く:書かれている名前の窓口へ。

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⚠️ 免責をご確認ください。 このページは、患者と、患者の家族の立場で、厚生労働省が公開している資料を調べて並べたものです。このページを書いているのは、医師でも薬剤師でも税理士でもありません。ここにあるのは、公的な資料に書かれている内容の整理と、それを手元でどう扱うかの提案だけです。 所得区分の判定、給付額、申請の要否といった個別の判断は、加入している保険者(後期高齢者医療広域連合・市区町村の国民健康保険・健康保険組合・協会けんぽなど)が行います。税の取り扱いは税務署・税理士にご確認ください。 本サイトの情報は一般的な情報提供が目的で、診断・治療方針を示すものではなく、特定の薬・商品・サービスをすすめるものでもありません。最終的な判断は、必ず専門家にご相談ください。

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