「親が通院できなくなった」「退院後、自分で薬局まで行けない」——そんなとき、薬は家族が取りに行くしかない、と思っていませんか。

実は、薬剤師が自宅に薬を届け、飲み方の管理まで手伝ってくれる公的な仕組みがあります。このページでは、その制度のあらまし、対応する薬局の探し方、電話で確認するときの文例までをまとめました。

薬剤師が自宅に来てくれる制度がある

医師が「通院が難しい」と認めた患者さんには、薬局の薬剤師が自宅を訪問して、薬を届け、保管状況や飲み残しを確認し、体調の変化を医師に伝える仕組みがあります。制度上の名前は「在宅患者訪問薬剤管理指導(ざいたくかんじゃほうもんやくざいかんりしどう)」といいます。

利用する保険制度の名前対象のめやす
医療保険在宅患者訪問薬剤管理指導通院が難しい人(年齢を問わず)
介護保険居宅療養管理指導(きょたくりょうようかんりしどう)要介護・要支援の認定を受けている人 ※こちらが優先

どちらも「医師の指示」が出発点です。まずは主治医やケアマネジャーに「薬の管理が難しい」と相談するのが近道です。

費用のめやす: 医療保険の場合、訪問1回あたりの指導料は650点(個人宅の場合。1点=10円、自己負担1〜3割でおよそ650〜1,950円)に、薬代などが加わります。※点数は2026年度時点の参考値です。最新の点数や介護保険の単位数は薬局にご確認ください。

【重要】「届出あり」=「在宅対応してくれる」ではありません

⚠️ ここが一番大切なポイントです
在宅患者訪問薬剤管理指導の「届出(とどけで)」は、国への登録手続きにすぎず、満たすべき施設基準(設備や人員の条件)がありません。実際には在宅訪問を行っていない薬局でも届出だけは出している、ということが珍しくありません。

つまり、「届出がある薬局のリスト」は在宅対応薬局の一覧ではなく、「電話して確認する候補リスト」です。利用したいときは、必ず事前に薬局へ直接確認してください。

一方、「在宅薬学総合体制加算(ざいたくやくがくそうごうたいせいかさん)」という届出は、年48回以上の訪問実績や時間外対応体制などの条件付きです。この届出がある薬局は、在宅対応の体制を実際に整えている可能性が比較的高い、という見方ができます(それでも新規の受け入れ可否は要確認です)。

届出・加算条件読み方
在宅患者訪問薬剤管理指導届出のみ(施設基準なし)対応の可能性あり。実施状況は要確認
在宅薬学総合体制加算1年48回以上の訪問実績、時間外対応、研修、医療材料の供給体制など在宅の体制を整えている薬局
在宅薬学総合体制加算2加算1に加え、個人宅への訪問実績の割合、医療用麻薬の指導実績・無菌調製・小児対応のいずれか、薬剤師3名以上など在宅を主要業務として行っている薬局。医療用麻薬・点滴などの専門的な在宅にも対応しうる

※ これらは制度上の分類であり、薬局の優劣を示すものではありません。

候補の絞り込み方(2つの公的な調べ方)

方法1: 地方厚生局の「届出受理医療機関名簿」

薬局の届出状況は、地方厚生局(ちほうこうせいきょく=厚生労働省の地方支分部局)のウェブサイトで公開されています。関東・甲信越にお住まいの方は「関東信越厚生局 施設基準の届出受理状況」のページから確認できます。

  1. 関東信越厚生局のサイトで「施設基準の届出受理状況(薬局)」のページを開く
  2. 都道府県ごとのファイル(Excel/PDF)をダウンロードする
  3. 市区町村名や薬局名で検索し、「在宅薬学総合体制加算」などの届出欄を確認する
  4. 見つけた薬局を「電話で確認する候補」としてメモする

名簿は原則として毎月更新されます。掲載名や略称の表記はファイルにより異なるため、各厚生局の凡例をご確認ください。お住まいが関東信越以外の場合は、お住まいの地域の厚生局(北海道・東北・近畿・東海北陸・中国四国・九州)のサイトをご覧ください。

方法2: 医療情報ネット(ナビイ)で薬局の機能を調べる

全国の薬局は、在宅対応の可否などの「薬局機能情報」を都道府県へ報告することになっており、厚生労働省の「医療情報ネット」で誰でも検索できます。「在宅医療への対応」などの条件で近所の薬局を絞り込めるため、生活者にはこちらのほうが使いやすい場合があります。

ただし、報告内容の更新タイミングにより最新の状況と異なることがあります。こちらも最終確認は薬局への電話で。

薬局への問い合わせ文例(そのまま使えます)

電話で次のように聞けば、必要なことがほぼ確認できます。

  1. 自宅への訪問(在宅訪問)を、いま実際に行っていますか?新しい患者の受け入れはできますか?
  2. 「自宅は○○(地名)ですが、訪問エリアに入っていますか?」
  3. 「医療保険(または介護保険)で訪問をお願いした場合、1回あたりの自己負担はどのくらいになりますか?」
  4. 「夜間や休日に体調が変わったとき、電話相談や臨時の対応はできますか?」
  5. 「将来、医療用麻薬(いりょうようまやく=がんの痛みなどに使う薬)や点滴の管理が必要になった場合も対応できますか?」

1の答えが「行っていない」でも、近隣の対応薬局を紹介してもらえることがあります。主治医・ケアマネジャー経由で探すのも確実な方法です。

2026年度(令和8年度)改定での主な変更点

2026年6月の診療報酬改定で、在宅に関する評価が次のように見直されました。国が薬局の在宅対応を後押ししている流れがわかります。

変更点内容
在宅薬学総合体制加算の引き上げ加算1: 15点→30点。加算2: 個人宅への訪問は100点に(施設は50点)。個人宅への訪問実績がより重視される要件に
訪問できる間隔の見直し「中6日以上あける」→「週1回」に。より柔軟に訪問しやすく
医師との同時訪問の評価を新設医師と薬剤師がそろって自宅を訪問し、薬を整理する取り組みを評価(訪問薬剤管理医師同時指導料)
複数名での訪問の評価を新設介助が必要なケースなどで薬剤師が他の職員と2人で訪問する場合の評価(複数名薬剤管理指導訪問料)
夜間・休日の連絡体制訪問を受ける患者に、時間外の連絡先を文書で渡すことが要件に

※ 算定要件・点数の詳細は告示・通知をご確認ください。

まとめ: 探し方の3ステップ

  1. 主治医・ケアマネジャーに「薬の管理が難しい」と相談する
  2. 厚生局名簿や医療情報ネットで近所の候補を2〜3軒に絞る
  3. 電話で「いま実際に訪問しているか」「受け入れ可能か」を直接確認する
ご利用にあたって(免責事項)
  • 本ページで紹介する届出・加算は制度上の分類であり、薬局の優劣を示すものではありません
  • 本ページは、厚生労働省・地方厚生局等の公的機関の情報をもとにした一般向けの参考情報であり、医療アドバイスではありません。個別の判断は医師・薬剤師にご相談ください。
  • 届出の有無は、実際にその対応を受けられることを保証するものではありません。掲載情報は電話などで直接確認する候補を絞り込むためのものとしてご利用ください。
  • 制度・点数は改定により変わります。最新情報は地方厚生局厚生労働省のサイトでご確認ください。
  • 特定の薬局を推薦・誘引するものではありません。

本記事は、厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」(令和8年3月5日版)をもとに作成しています。最新の届出状況は各地方厚生局のサイトでご確認ください。
最終更新日: 2026年6月5日