ファイナンシャルヘルスリテラシーとは何かーお金と健康を、同じテーブルに乗せるという発想 $000101
親の介護が現実味を帯び、自分の老後も他人事ではなくなってくる40〜50代。
この世代の会話には、「お金」と「健康」が頻繁に登場しますが、多くの場合は別々の話題として登場します。
「老後資金はいくら必要か」と「この検査、受けた方がいいのか」は、本来は同じテーブルで議論されるべきテーマです。
ファイナンシャルヘルスリテラシー(Financial Health Literacy)は、健康リテラシーと金融リテラシーが重なる領域を扱う概念と、ここでは定義することにします。
具体的には、医療と生活に関する情報と、それに伴う費用や制度の情報を理解し、自分や家族にとって合理的で納得感のある意思決定を行う力、と定義できます。
単に「お金の知識」や「病気の知識」があるだけではなく、その二つを組み合わせて、自分たちの人生の文脈の中で意味づけできるかどうか、という問いです。
たとえば、がんの治療方針を選ぶ場面を想像してみましょう。
最新の治療を受けるかどうかは、効果・副作用・通院回数・家族のサポート体制・仕事への影響、そしてもちろん費用など、多数の要素のバランスで決まります。
このとき、「医師の説明が理解できること」と「費用や生活への影響を現実的にシミュレーションできること」は、どちらも欠かせない前提条件になります。
日本は世界的に見ても公的医療保険制度が手厚く、高額療養費制度などにより「天井」がある構造になっています。
しかし、この制度の存在や大まかな水準を知らないと、「治療費がいくらになるか分からないから怖い」という漠然とした不安だけが膨らみ、必要な受診や治療を控えてしまうことがあります。
制度を完全に暗記する必要はありませんが、「ざっくりここまでは自己負担に上限がある」という感覚を持てるかどうかで、行動は大きく変わります。
一方で、金融リテラシーの文脈では、「将来に備えて投資を」というメッセージが強調されがちです。
もちろん資産形成は重要ですが、医療・介護という文脈では、「増やすこと」以上に「必要なときに、ためらわずに使えること」が価値を持ちます。
治療やケアを諦めないためのお金は、単なる貯蓄額や運用利回りではなく、「どのタイミングで、どの程度まで使うと決めているか」という意思決定の設計図とセットで機能します。
ファイナンシャルヘルスリテラシーは、この設計図づくりを支える土台だと考えてください。
- どのくらいの医療費・介護費が現実的に想定されるのか
- どの制度や保険を使えば、家計へのインパクトを抑えられるのか
- それでも不足する部分を、どう準備しておくと安心して選択できるのか
こうした問いに、自分なりの答えを持てているかどうか。
それが、単に「お金の知識がある/ない」という話とは別のレベルで、健康上の選択肢の広さや心理的な安心感を左右していきます。
この連載では、投資テクニックや節約術のような「裏技」を紹介することが主目的ではありません。
むしろ、「お金が理由で健康をあきらめないために、どんな情報と考え方が必要なのか」を、ひとつひとつ整理していくことを狙いとしています。
すでにある程度の金融リテラシーを持った方にも、ヘルスケアの文脈にそれを接続するための“視点の架け橋”として楽しんでもらえる内容を目指します。
次回は、「なぜお金の不安が健康に直結するのか」を、受診控え・ストレス・家族関係といった具体的なトピックから掘り下げていきます。
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