シリーズ3 第4回:「かかりつけ薬剤師を“制度で終わらせない”ために──患者としてできること」 「かかりつけ薬剤師・かかりつけ薬局って、実際は?」 #134
「かかりつけ薬剤師」という言葉は知っていても、「結局、紙にサインして終わりなのでは?」と感じている人もいるかもしれません。説明の用紙を渡されても、そのままカバンの中でくしゃっとなっている──そんな経験がある方もいると思います。せっかくの仕組みも、制度の説明だけでは、自分ごととして実感しにくいのが正直なところかもしれません。
でも、第2回・第3回で見てきたように、本質はもっとシンプルです。「この薬局、この薬剤師さんなら、家族のことを含めて相談しても良さそうだ」という相手をひとり見つけること。そこさえ決まっていれば、制度としての“かかりつけ”という枠組みは、その関係を後押ししてくれるための“おまけ”のようなものです。では、その一歩をどう踏み出していけばいいのでしょうか。
まず意識したいのは、「いつも同じ薬局に通ってみる」という小さな選択です。体調が悪いときは、ついその場で一番近い薬局に入ってしまいがちですが、「今後も通いやすい場所か」「家族全体で使いやすいか」を一度立ち止まって考えてみると、選び方が少し変わります。家や職場、子どもの学校など、日常の動線の中で続けて通えそうな薬局を、ひとつ決めてみることから始めてみるのがおすすめです。
次に、「少しだけ勇気を出して、こちらから話してみる」ことです。たとえば、カウンターで薬を受け取るときに、「実は、前の薬が飲みにくくて…」「子どもがどうしても嫌がってしまって…」と、一言だけでも付け加えてみる。すると、多くの場合、「それなら、こんな工夫がありますよ」「次からは別のタイプの薬を先生に相談してみましょうか」といった提案が返ってきます。そのやり取りが、かかりつけ薬剤師との関係のスタートになります。
「いきなりそんなに話せない」という人は、「聞きたいことを1つだけメモしていく」のも良い方法です。「この薬は、食事とのタイミングはどれくらい空ければいいのか」「市販薬と一緒に飲んでも大丈夫か」など、気になることは小さいことでもかまいません。メモを見ながらでも、“1つだけ質問する”と決めておくと、忙しい場面でも聞きそびれにくくなります。質問を重ねるうちに、お互いに少しずつ顔なじみになっていきます。
高齢の親御さんや家族がいる場合には、「家族の分も含めて相談していいですか?」と最初に一言添えてみると話がしやすくなります。「お母さまは他の病院でも薬をもらっていますか?」「飲み忘れはどうですか?」といった問いかけから、薬局側も全体像をつかみやすくなります。必要であれば、お薬手帳を一緒に確認しながら、「この薬はまとめて朝にしてみましょう」「これは眠気が出やすいので、時間をずらしましょう」といった、生活に合わせた調整の相談もしやすくなります。
もちろん、すべての薬局・薬剤師さんが同じようにフィットするわけではありません。「ちょっと話しづらいな」と感じることがあれば、無理に通い続ける必要はありません。いくつかの薬局を試してみる中で、「ここは説明が分かりやすかった」「ちゃんと話を聞いてくれた」と感じた場所を、自分なりの“第一候補”にしていけば大丈夫です。その中で、「この人になら任せたい」と思える薬剤師さんに出会えたら、そのときに改めて“かかりつけ”の話をしてみるのも良い流れです。
大切なのは、「かかりつけ薬剤師」という制度に、自分を合わせにいくことではありません。「自分と家族の健康を、一緒に考えてくれる人がほしい」という、ごく自然な感覚から始めることです。そのうえで、「この人にお願いしたい」と思える相手が見つかったら、制度としての“かかりつけ”を活用する。そうすれば、在宅訪問や電話での相談、長期的な服薬管理など、制度に用意されたサービスも、ぐっと活きてきます。
シリーズ3を通して、「薬局にはあまり期待していない」という本音から、「実はもっと頼ってよかった」という気づき、そして「かかりつけ薬剤師と一緒に、自分の暮らしを整えていく」というところまで、一歩ずつ進んできました。これからの時代、薬局はただ薬を受け取る場所ではなく、「自分と家族の物語に寄り添ってくれる場所」へと変わっていきます。その変化を、自分のペースで少しずつ味わいながら、“この人となら長く付き合っていけそうだ”と思える薬剤師さんとの関係を育てていけたら、とても心強いはずです。
