シリーズ0 第3回:「賢い患者」がつくる、誰も切り捨てない医療 「日本の医療費を自分ごとで考える──“誰かを切り捨てない”ためにできること」 #103

ここまで2回にわたって、日本の医療費の話と、調剤基本料の具体的な数字を見てきました。最終回の今回は、少し視野を広げて、「なぜ患者一人ひとりの“賢さ”が、社会保障の持続可能性につながるのか」という話をまとめてみたいと思います。

あらためて強調したいのは、「行政が悪い」「政治が悪い」「薬剤師が悪い」と、誰かを責めることが目的ではない、という点です。
医薬分業の歴史を見ても、病院や診療所が薬価差益で過度に利益を得ていた流れを改める、という狙いがありましたが、その後も制度は何度も改定され、現場の薬局や薬剤師もそれぞれの立場で懸命に対応してきました。
そのうえでなお、「では患者として自分は何ができるのか」を考えたい、というのがこのシリーズの出発点です。
たとえば、特別調剤基本料Aの薬局を選ぶ、というのは、その一つの方法です。1枚あたり40点=400円の差があり、患者負担120円、税・保険料280円が減るというのは、前回までに書いた通りです。 もちろん、薬局の価値は「安さ」だけではありません。薬剤師さんがどれだけ丁寧に話を聞いてくれるか、薬の説明が分かりやすいか、在宅やかかりつけ機能をどこまで担っているかなど、評価すべきポイントはたくさんあります。

そのうえで、あえて「調剤基本料1」と「特別調剤基本料A」という“対立軸”を極論として提示したのは、患者自身が「どの薬局でも同じではない」「自分の選択が医療費を動かす」という感覚を持つことが大切だと思うからです。
白か黒かではなく、「どういう価値を持つ薬局に、自分のお金と保険の財源を託したいか」という問いかけでもあります。

医療費のGDP比が8%か9%かという議論は、一見すると自分の生活から遠い話に見えます。しかし、処方箋をどの薬局に持っていくか、どんな質問を薬剤師に投げかけるか、納得できないときにもう一歩踏み込んで聞いてみるかどうか、といった日々の選択は、確実に自分の手の中にあります。その一つひとつを、少しだけ賢く選んでいくことが、結果として「誰も切り捨てない医療」に近づくための、いちばん現実的な道なのではないかと思います。

繰り返しになりますが、私は医療の専門家ではありません。ただ、病院や薬局に通う一人の患者として、「文句を言うだけでなく、自分たちも知識を持って一緒に支える側に回りたい」と感じています。処方箋1枚、120円の自己負担、280円の税金・保険料。その小さな数字の積み重ねが、いつか「誰も切り捨てない社会保障」につながると信じて、これからも患者目線の記事を書いていきたいと思います。