シリーズ0 第2回:処方箋1枚からできる医療費削減の第一歩  「日本の医療費を自分ごとで考える──“誰かを切り捨てない”ためにできること」 #102

前回は、日本の医療費がGDP比8%という現実と、「誰かを切り捨てるしかないのか?」という重い問いを紹介しました。
今回は、そこから一歩進んで、「処方箋1枚からでも変えられること」を、もう少し具体的に見ていきたいと思います。

まず、もう一度だけ調剤基本料の話をおさらいします。たとえば「調剤基本料1」の薬局では、基本料が45点=450円です。それに対して「特別調剤基本料A」の薬局は5点=50円で、基本料だけで400円の差があります。 患者負担3割として120円、残りの280円は税金や保険料からの支出です。ここまでは前回のおさらいですが、この「たった400円」の差を、少しだけ引き伸ばして考えてみます。

年間の処方箋の枚数は、ざっくり約9億枚と言われています。 仮にそのうち7割が調剤基本料1と言われているので、単純計算で全ての6億3,000万枚が、調剤基本料1から特別調剤基本料Aの薬局にシフトしたとします。1枚あたり400円下がるとすると、400円 × 6億3,000万枚で、約2,500億円の医療費が下がる計算になります。
もちろん、これは非常に単純化した「机上の計算」ですし、調剤基本料だけで医療費が決まるわけではありません。
それでも、「処方箋1枚で400円」という小さな差が、積み重なるとこんな桁になるのか、というイメージは持っていただけるのではないでしょうか。
ここで大事なのは、この2500億円削減でもらう薬の質は落ちません。しいて言うならば、調剤基本料1の薬剤師さんが素晴らしい方であれば、その店舗に通うのがよいと思います。

ここで大事にしたいのは、「調剤基本料1の薬局は悪で、特別調剤基本料Aの薬局が正義だ」という、白黒はっきりさせる対立構造ではありません。
極論として「45点を5点にできないか」と考えることで、患者自身が「自分の選択で医療費を動かせるのだ」と意識することが重要だ、という点です。現行のルールの中で、患者ができる工夫のひとつとして「基本料の低い薬局を選ぶ」という選択肢がある、という話です。

行政が「明日から全国一律で特別調剤基本料Aにします」と決めれば話は早いかもしれませんが、現実にはさまざまな利害や事情が絡んで、そう簡単には進みまないようです。
だからこそ、一人ひとりの患者が「今日持っている処方箋を、どの薬局に持っていくのか」という足元の選択から、少しずつ変えていくしかないのではないかと感じています。
私は医療の専門家ではありません。ただ、患者として、「自分の行動で医療費と自己負担を少しでも減らせるなら、それを知っておきたいし、同じ患者の皆さんにも知ってもらえたらうれしい」と思っています。次回は、「なぜ患者自身の“ちょっとした賢さ”が、社会保障のサステナビリティにつながるのか」というところを、もう少し丁寧に掘り下げてみたいと思います。