シリーズ3 第5回:「明日、薬局でできる小さな一歩──“かかりつけ”を自分の言葉にしてみる」 「かかりつけ薬剤師・かかりつけ薬局って、実際は?」 #135

ここまで4回にわたって、「かかりつけ薬剤師・かかりつけ薬局」という言葉を、なるべく生活の言葉に置き換えながら見てきました。ふり返ってみると、専門的な制度の話というより、「自分や家族のことを覚えていてくれて、困ったときに相談できる人がいるかどうか」という、とても素朴なテーマだったのではないでしょうか。最後の第5回では、その気づきを“明日からの行動”に落とし込んでみたいと思います。
まずは、「自分にとっての理想の薬局・薬剤師さんってどんな人か?」を、少しだけ言葉にしてみるところから始めてみます。たとえば、「子どもの薬の飲ませ方を一緒に考えてくれる人」「高齢の親のことも含めて相談に乗ってくれる人」「難しい言葉を使わず、ゆっくり説明してくれる人」など、思いつくままでかまいません。完璧な条件を並べる必要はなく、「こうだったら助かるなあ」というイメージを、自分の中で見える形にしておくことが大事です。
次に、「そのイメージに“少し近い”薬局を一つ決めてみる」というステップです。すでに何度か通ったことがある薬局でもいいですし、「あそこは雰囲気が良さそうだな」と前から気になっていた薬局でも構いません。大切なのは、「ここを自分の第一候補にしてみよう」と一度心の中で決めてみることです。もちろん、合わないと感じれば、また別の候補を探せばよく、「一度決めたら変えてはいけない」という話ではありません。
そして、いざ薬局に行ったときには、「今日はこれだけは聞いてみよう」という小さなテーマを一つだけ持っていきます。「この薬を飲むときに、食事との順番はどれくらい気にしたらいいですか?」「仕事で夜遅くなる日が多いのですが、その場合はどう飲めばいいですか?」といった、具体的な質問がひとつあるだけで、会話はぐっと始めやすくなります。もし緊張しそうなら、手帳やスマホのメモに書いて持っていくのも良い方法です。
すでに何度か顔を合わせている薬剤師さんがいるなら、「いつもありがとうございます。実は、子どもの薬のことでちょっと相談があって…」と、ひと言添えてみるのもいいきっかけになります。そこから会話が広がって、「それなら、普段の生活リズムも少し教えてもらえますか?」といったふうに、相手の側からも質問が返ってくるかもしれません。そうしたやり取りの中で、「あ、この人にはこれからも相談していきたいな」と感じる瞬間が出てきます。
もし、説明が早すぎてついていけなかったり、「ちょっと話しづらいな」と感じたりすることがあったら、その感覚も大事にして構いません。「今日は質問できなかったから、次は別の薬局も試してみよう」と切り替えるのも、患者として自然な選択です。“かかりつけ”という言葉に自分を縛りつけるのではなく、「自分が話しやすい人を探していいんだ」という感覚でいて大丈夫です。
一方で、「この薬剤師さんとは、これからも長く付き合っていけそうだな」と感じる人に出会えたとき。そのときは、「いつも相談に乗ってもらっているので、これからもお願いしていきたいです」と、素直に伝えてみるのも一つの方法です。必要に応じて、正式に“かかりつけ薬剤師”の手続き(同意のサインなど)を案内してもらえることもありますが、それはあくまで、すでにある関係に名前をつける作業にすぎません。
このシリーズ3を通して見えてきたのは、「かかりつけ薬剤師」というのは、特別な誰かの話ではないということです。3歳の子どもにジスロマックを飲ませる工夫を一緒に考えてくれた薬剤師さん。高齢の親の薬の飲み方について、家族と一緒に悩んでくれる薬剤師さん。そうした“身近な誰か”との間に生まれる小さな信頼の積み重ねこそが、制度の言葉の中身をゆっくりと満たしていきます。
明日、薬局に行く予定があるなら、「今日は質問をひとつだけしてみよう」と決めてみるところからでも十分です。特に予定がない人でも、「いざというときにどの薬局に行こうか」「ここなら相談しやすそうだな」という候補を頭の中にひとつ作っておくだけで、気持ちは少しラクになります。“かかりつけ薬剤師・かかりつけ薬局”という言葉を、自分なりの言葉に置き換えながら、無理のないペースで「いつもの薬局」「いつもの薬剤師さん」との関係を育てていけたら──それが、このシリーズのいちばんのゴールです。