シリーズ3 第3回:「“いつもの薬局”がある安心──かかりつけ薬剤師とつながるということ」 「かかりつけ薬剤師・かかりつけ薬局って、実際は?」 #133
「かかりつけ薬剤師」と聞くと、少し堅い言葉に感じるかもしれません。けれど、イメージとしてはもっとシンプルで、「自分や家族のことをよく知ってくれている、いつもの薬剤師さん」がいる状態だと思ってもらうと分かりやすいかもしれません。
特別な手続きや、難しい制度の話より先に、「あの薬局なら、ちょっと相談してみようかな」と思える相手がいるかどうかが大事になります。
たとえば、子どもの風邪や中耳炎で何度か同じ薬局に通っていると、「このお子さん、粉薬が苦手でしたよね」「前はバニラアイスに混ぜて飲めていましたが、今回も同じやり方でいきましょうか」といった会話が自然と増えていきます。
初めて会う薬剤師さんだと一から説明が必要なことも、「いつもの人」なら、前回までの様子を踏まえて話してくれます。
忙しいときほど、この「話が早い」ことが、親にとっては大きな助けになります。
大人の場合でも同じです。花粉症や高血圧、胃薬など、長く付き合う薬が増えてくると、「最近、飲み忘れが多くて…」「この薬を飲むと、夕方になると少しフラフラする気がして」といった、ちょっとした悩みが出てきます。
そんなとき、「いつもの薬局」であれば、これまでの処方や体調の変化も含めて、「じゃあ飲む時間をこう変えてみましょうか」「次の診察のとき、こういうふうに先生に伝えると相談しやすいですよ」と、一緒に考えてくれることがあります。
高齢の家族がいる場合には、その支えはさらに大きくなります。飲む薬の種類が増えてくると、本人も家族も管理が大変です。「お薬カレンダーを使ってみませんか」「この薬は夜だけにまとめてみましょう」など、生活に合わせた工夫を提案してもらえると、介護する側の負担も少し軽くなります。
「最近、ふらつきが増えたとお話しされていましたが、その後どうですか?」と声をかけてもらえることで、受診のタイミングに気づけることもあります。
こうしたやり取りは、派手なサービスではありません。病院のように大きな検査機械があるわけでもなく、「最新の医療ニュース」を教えてもらえるわけでもないかもしれません。それでも、「前回こうでしたよね」と覚えていてくれて、「今回も一緒に考えましょうか」と寄り添ってくれる人がいることは、じわじわと暮らしの安心感につながっていきます。「かかりつけ薬剤師」という言葉の裏側には、そんな日々の積み重ねがあります。では、私たち患者側は、どうやって“自分のかかりつけ薬剤師・薬局”を見つけていけばいいのでしょうか。難しく考える必要はなく、まずは「処方せんを持っていく薬局を、できるだけ一つにまとめてみる」ことからでかまいません。いくつか試してみた中で、「ここは話しやすかったな」「説明が分かりやすかったな」と感じた薬局があれば、そこを“いつもの薬局”にしてみる。そんな小さな一歩から、関係は少しずつ育っていきます。
もう一つのポイントは、「少しだけ自分から話してみる」ことです。「実は、こういうことが気になっていて…」と一言添えてみると、多くの薬剤師さんはそこから話を広げてくれます。忙しそうに見えるときでも、「今は立て込んでいそうだから、次に来たときに相談してみよう」と、タイミングを見ながら少しずつ距離を縮めていくイメージです。「この人になら、家族のことも含めて話してみてもいいかな」と感じられたら、そのときにはもう、かかりつけ薬剤師への第一歩を踏み出していると言えるかもしれません。
かかりつけ薬剤師・かかりつけ薬局という仕組みは、制度として用意された「選択肢」の一つです。でも、その一番の意味は、紙に名前を書くことよりも、「自分のことを知ってくれている人がいる」という実感にあります。病気や薬の不安は、どうしても一人で抱え込みがちです。そんなとき、「あの薬剤師さんに聞いてみよう」と思える相手がいることは、病院の診察室とは少し違う、心強い支えになります。
このシリーズ3では、「薬局にはあまり期待していない」という正直な気持ちからスタートしました。そこから、ジスロマックとバニラアイスのエピソードのように、「実はもっと頼ってよかったんだ」と気づく体験をたどってきました。これからの時代、薬局は「薬をもらう場所」から、「自分と家族の健康について相談できる場所」に変わっていくはずです。その変化の中心にいるのが、“信頼できるかかりつけ薬剤師”との出会いなのだと思います。
