第2回:「診療科が増えると、薬も一つずつ足されていく」 シリーズ16「薬が増えやすく、減りにくい“しくみ”をやさしくほどく」


親の診察券を見たとき、いつの間にか病院の名前が増えている──そんなことはないでしょうか。
内科、整形外科、眼科、泌尿器科、心療内科……診療科が増えるたびに、「その専門の薬」が一つずつ足されていくのが、今の医療のごく自然な流れです。
1. それぞれの医師は、「自分の持ち場」を一生懸命守っている
たとえば親が、こんなふうに通院しているとします。
- 内科:血圧とコレステロールの薬
- 整形外科:腰や膝の痛み止め
- 眼科:緑内障の点眼
- 泌尿器科:夜間頻尿の薬
それぞれの医師は、自分の専門の病気をよくするために、「必要だ」と考える薬を出します。
例にとると,内科の先生は血圧とコレステロール、整形外科の先生は痛み、眼科の先生は目の圧(眼圧)、泌尿器科の先生はトイレの回数──それぞれの“持ち場”に集中しているのです。
その結果として、
親の手元には「血圧の薬」「痛み止め」「目薬」「夜間頻尿の薬」と、別々の目的の薬が、一つずつ足されていきます。
それぞれは「必要で出された薬」なのに、合計するとかなりの数になっている、という状態が生まれます。
2. 「全体を見る人」がいないと、足し算ばかりになりやすい
ここでの問題は、「誰かが悪い」ことではなく、
**「親のからだ全体と、薬の全体をまとめて見る人が、自然には決まっていない」**という“しくみ”です。
- 内科の先生は、整形外科の痛み止めまでは細かく把握していないかもしれない。
- 整形外科の先生は、眼科の点眼のことまでは聞き取れていなかったかもしれない。
- 泌尿器科の先生は、「夜トイレが近い」という相談の裏に、他の薬の影響が潜んでいるとは考えが及んでいない可能性がある。
誰も「全体を見たくない」わけではありません。
ただ、今の医療は専門分化が進んでいて、「一人の医師が全部を細かく追いきる」のは現実的に難しくなっています。
そうすると、
- 血圧が少し高い → 血圧の薬を足す
- 痛みが続く → 痛み止めを足す
- トイレが近い → 夜間頻尿の薬を足す
というふうに、「症状ごとに薬が一つずつ足されていく」流れが、自然にできてしまうのです。
3. だからこそ、「全体を見てほしい」という一言が効いてくる
この“しくみ”の中で、薬を見直しやすくするために、患者や家族ができることはシンプルです。
- 親の薬を紙やメモに一覧にしておく
- 受診のときに、その紙を見せながら、こう伝える
「いま、こういう薬を全部飲んでいます。
病院が分かれていて、全体が自分ではよく分からなくなってきました。
減らせる薬があるかどうかも含めて、一度“まとめて”見てもらえますか。」
この一言があるだけで、
内科の先生が整形外科や泌尿器科の薬にも目を通してくれたり、
薬局で薬剤師が「全体の重なり」をチェックしたうえで、必要に応じて主治医に相談してくれたりしやすくなります。
診療科が増えること自体は、悪いことではありません。
それぞれの専門の先生が、自分の責任を果たそうとしてくれている結果でもあります。
ただ、「その合計が親のからだにどう効いているか」は、
親本人・家族・医師・薬剤師が一緒になって見ていかないと、なかなか見えてきません。
シリーズ16では、こうした“増えやすく・減りにくいしくみ”を一つずつ言葉にしながら、
シリーズ13〜15で練習してきた「もしかして薬かな?」「一度全体を見てもらえますか」という一言が、どこで効いてくるのかを、一緒に確かめていきます。
