シリーズ3 第2回:「“薬局で待つのが面倒”と思ったあの日──薬剤師が気づかせてくれたこと」 「かかりつけ薬剤師・かかりつけ薬局って、実際は?」 #132
先日、3歳の息子が高い熱を出して、小児科を受診しました。診察が終わる頃には親のほうもぐったりで、「あとはジスロマックだけもらって、早く家に帰りたい」と思いながら、処方せんを持って近所の薬局へ向かいました。待合室では息子がぐずり始め、「正直、待つのがつらいな」と感じていました。
ようやく名前が呼ばれてカウンターに行くと、薬剤師さんがジスロマックの袋を見せながら、こんなふうに話しかけてくれました。「このジスロマック、けっこう苦くて、小さいお子さんだと嫌がることが多いんです。もしアイスが大丈夫なら、少量のバニラアイスに混ぜると、意外とスッと食べてくれるお子さんもいますよ」。その一言で、「ああ、またあの“薬イヤイヤ”と戦わなくちゃいけないのか」という不安が、少しだけ軽くなりました。
半信半疑のまま家に帰り、言われた通りにジスロマックを少しのバニラアイスに混ぜて、スプーンで息子に差し出してみました。いつもなら、薬の匂いがしただけで顔をそむけるのに、その日は表情をしかめながらも、なんとか最後まで食べきってくれました。「飲ませるの、大変でしたよね。もし合いそうなら、このやり方を数日続けてあげてください」という薬局での一言を思い出しながら、「あのときちゃんと相談しておいてよかった」と心の中でホッとしました。
それまでは、「薬局は、処方せんを渡して薬を受け取るだけの場所」としか思っていませんでした。待ち時間は短いほうがいいし、説明も最低限でいい、とさえ感じていました。でも、息子がジスロマックを嫌がらずに飲めた経験を通して、「あの数分のやりとりが、この子がきちんと薬を飲めるかどうかを左右していたんだ」と実感しました。薬そのものだけでなく、「どうしたらこの子が飲めるか」まで一緒に考えてくれる存在がいることは、親にとって大きな支えです。
思い返してみると、「最近、薬が余りがちなんです」と話したときに、「飲みにくさやタイミングで困っているところはありませんか?」と聞き返してくれたのも、その薬剤師さんでした。こちらがうまく言葉にできないモヤモヤを、少しずつ引き出してくれるような質問がきっかけで、「実は…」と日常の困りごとを話せるようになっていきました。「薬をもらうだけの場所」だった薬局が、少しずつ「子どもの体調や家族の生活を相談できる場所」に変わっていく感覚でした。
もちろん、すべての会話が特別なエピソードになるわけではありません。多くの日は、名前を呼ばれて、いつものように薬を受け取って帰るだけです。それでも、ときどき「前回のあの後、どうでしたか?」「飲みづらそうにしていたお薬、今は大丈夫ですか?」と声をかけてもらえることで、「この人は、うちの子のことを覚えてくれているんだ」という安心感が生まれます。その積み重ねが、「あの薬局なら相談してみようかな」と思えるきっかけになっていきます。
第1回では、「そもそも薬局にはあまり期待していない」という気持ちについて触れました。第2回では、ジスロマックとバニラアイスの小さなエピソードを通して、「本当はもっと頼ってよかったんだ」と気づかせてくれる薬剤師さんの存在を描きました。次の第3回では、こうした日常のやり取りを積み重ねる“かかりつけ薬剤師”がいると、どんなふうに自分と家族の暮らしが変わっていくのか──その姿をもう少し具体的に見ていきます。
